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第1節 総長挨拶・副総長挨拶
第2節 基調講演
第3節 パネルディスカッション |
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第2節 基調講演
「女性のチャレンジ支援について
-地域におけるチャレンジネットワーク-」
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講師内閣府男女共同参画局長
名取(なとり)はにわ氏
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本籍 |
埼玉県 |
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学歴 |
昭和48年3月 |
東京大学法学部卒業 |
試験 |
昭和47年8月 |
国家公務員採用上級甲種試験(法律)合格 |
職歴 |
昭和48年4月 |
法務省入省
法務省人権擁護局調査課、入国管理局入国審査課、保護局恩赦課、矯正局教育課、
愛光女子学園教務課、分類保護課、内閣総理大臣官房審議室(婦人問題担当室)を
経て
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59年7月 |
日本学術会議事務局学術部情報国際課国際担当科長補佐 |
61年4月 |
法務省上席審査官(東京入国管理局審査第二課) |
62年4月 |
法務省法務総合研究所教官 |
平成元年4月 |
同 入国管理局審判科長補佐 |
3年4月 |
同 入国在留課長補佐 |
6年4月 |
内閣官房内閣外政審議室(インドシナ難民対策連絡調整会議事務局)内閣審議官 |
7年4月 |
内閣総理大臣官房男女共同参画室長・内閣審議官 |
11年7月 |
日本学術会議事務局学術部長 |
13年1月 |
文部科学省生涯学習政策局主任社会教育官 |
15年7月 |
内閣府大臣官房審議官(総合企画調整担当) |
8月 |
同男女共同参画局長 |
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皆様、こんにちは。今日は女性のチャレンジ支援について、パンフレットをお配りしておりますが、それに基づいてお話したいと思います。(パンフレットは30~31ページに掲載)
本日、名古屋大学男女共同参画シンポジウムにお招きいただきまして、本当に光栄に思っております。このシンポジウムは、企業、関係団体、地域が一体となって男女共同参画を推進するため、各界でご活躍されている方たちが講演テーマであります「男女共同参画社会推進における産学官の連携の意義と可能性」の下にパネルディスカッションに参加をされるということでございまして、各分野における現状と課題、産学官の連携に期待することについてご議論をいただくということは、日本で最初の試みでございます。まさに名古屋大学からの発信ということで、私もこれからのパネルディスカッションを聞かせていただくのを、たいへん楽しみにしております。
女性も男性も個性と能力を発揮できる社会をめざすことが男女共同参画社会なのですけれども、本日の講演のテーマに沿いまして、その実現を地域において具体的にどのように進めていくかということについてお話したいと思います。
今まではともすると男女共同参画社会の実現というのは、割合抽象的に言われておりまして、具体的にどうするかということについては今一つ、論じられ方が足りなかったと思います。そこで、男女共同参画会議で報告されました「女性のチャレンジ支援策」のテーマであります地域におけるチャレンジネットワークを中心として、お話させていただきたいと思います。
平成13年1月、内閣府に男女共同参画会議が設置されました。普通の審議会とは違うという点は、議長が内閣官房長官(男女共同参画担当大臣)、主要大臣と学識経験者が、男女共同参画社会実現に向けての議論を進めるというところです。
施策の推進体制として、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官を副本部長、全閣僚を本部員とする男女共同参画推進本部が置かれています。小泉総理はいつも男女共同参画会議においでくださいます。
平成14年1月の男女共同参画会議において、小泉総理から、暮らしの構造改革の一環として男女がともに個性と能力を十分に発揮できる社会の構築に向け、男女の新しい発想や多様な能力を活かせるよう、女性のチャレンジ支援策について検討する旨の指示がありました。
このため、男女共同参画会議にはいくつかの専門調査会がおかれていますが、その中の基本問題専門調査会で1年間検討いただきまして、最終報告をまとめ、平成15年4
月の第10回男女共同参画会議に報告いたしました。そしてそれを内閣総理大臣と関係各大臣に対する意見として決定をしたところでございます。
同年6月には、2020年までにあらゆる分野の指導的地位に占める女性の割合が少なくとも30%程度になるよう期待するということが男女共同参画推進本部で決定されました。これは、経済財政諮問会議で作っております骨太方針にも入っています。ですから、これは会議で決定した他に、そういう形でより政府の政策として進めるという方向付がなされているということです。
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このパンフレットの2ページ(P.30)を開けていただきたいと思います。ここでは「女性のチャレンジ支援策」の全体図を示しておりまして、左上に「チャレンジ支援策の必要性・緊急性」があります。まず、左の上の方に「構造改革にチャレンジは不可欠」となっております。豊かで活力ある社会を実現するためには、意欲と能力のある女性が社会で活躍できるような社会経済の構造改革が必要です。また、意欲と能力がある男女、とりわけ女性が活躍することによって、構造改革も進んでいきますということであります。
それからその右側に「世界の中でも低い活躍状況」、それは女性の活躍が低いということを言っています。国連開発計画が(UNDP)「人間開発報告書」を毎年発表しております。人間がどのくらい能力を開発できているのかという指標を作りまして、各国ランキングをしています。日本はどなたも先進国だと思っていらっしゃると思うのですが、実は女性の活躍度を示す「ジェンダー・エンパワーメント指数」が、2002年では日本は70カ国中44位です。要するに真ん中ですね。
これだけだと「ああ、真ん中か」という話なのですが、実は2001年は66カ国中32位だったのです。それがどーんと12位も落ちてしまったということで、ちょっとショックな数字になっています。
一体、この指数は何なのかというと、4つの要因すなわち、1つ目は、女性の所得です。日本は、フルタイム労働者の賃金格差が男性を100とすると女性が65.3%と先進国の中ではこの格差が非常に大きいのです。
2つ目は、専門職・技術職に占める女性の割合、これは結構日本はいい線をいっています。3つ目は、行政職・管理職に占める女性の割合、これはもうどーんと低いので、あとでご説明します。国会議員に占める女性の割合、これもなかなか先進諸国には追いつきません。
今申しました女性の所得、専門職・技術職に占める女性の割合、行政職・管理職に占める女性の割合、国会議員に占める女性の割合、これを用いて各国ランキングすると、2002年の数字で70カ国中の44位です。日本は少しずつは進んでいるのですけれども、他の国々にどんどん追い越されているのです。
それから、「ダボス会議」におきまして世界経済フォーラムが報告いたしました国際競争力報告(2001年~2002年)で、日本女性の経済活動状況は、75カ国中69位。国際的にも指摘されているように、諸外国に比べ女性の能力が生かされず、活躍度が低いということになります。
それから、2ページの「組織活性化の鍵」は、企業とか各種団体、自治会等の組織が、意欲と能力のある女性が活躍できる組織づくりをすることは、組織が新たな発想を取り入れることになり、多様化する社会で迅速かつ柔軟に対応し、競争力を発揮するためにも重要な戦略であるといろいろなところで言われております。
よりわかりやすく言うならば、男性だけでなく、男女がいれば、よりいろいろな考えが出てきます。そしていろいろと発想が出るということが実は組織活性化の鍵になるということです。
男女共同参画社会というのは、男女が知恵と力を出し合い、共に支え、共に栄える社会です。そのために女性のチャレンジ支援は重要です。それでは「基本的な考え方」はどうなのかというと、「3つのチャレンジ」を考えています。「上」へのチャレンジ、「横」へのチャレンジ、それから「再」チャレンジであります。
「上」へのチャレンジというのは、政策方針決定を行うところに、より多くの女性を登用しましょうということです。
「横」へのチャレンジというのは、今まであまり女性が進出していなかったところへもどんどんチャレンジしましょう。「横」と「上」というのは関連があります。「上」へと言っても層が厚くならなければ仕方がないわけで、「横」へのチャレンジ、女性が今まで進出していなかったところにどんどん進出して、そしてそれからまた「上」にということで、連動しています。
それから続きまして「再」チャレンジですが、日本は子どもが産まれますとなかなか女性が仕事を続けないという国でございます。実に末っ子が産まれたあとに生まれる前と同じ企業に勤めているという方が、3分の1ぐらいしかいないのです。それだけに「再」チャレンジというのはとても大事なのです。また「上」「横」「再」チャレンジ全てに、家庭と仕事の両立支援が不可欠です。
それでは、もう少し具体的に「上」と「横」についてお話を紹介したいと思います。3ページ目(P.30)の一番左側に緑のところに「活躍できていない女性の現状」というのがございます。ここを見ていただきますと、まず女性の雇用者の割合は4割。これは少なくはないですね。管理職の割合を見てみますと、ここでは8.9%ですが、おかげさまで2002年は増えまして9.6%になっています。ただ、9.6%で「ああ、増えた増えた」と言えない状況がこの下にございます。たとえばアメリカ、カナダ、ドイツ等々見ていますと、10%以下というのはさすがにないとわかります。
それから農業就業の人口の占める女性の割合というのは約6割なのですけれども、農協の正組合員になりますと14.3%。さらに農協の役員になりますと0.6%ということで、1%にもまだなっていないということになります。
大学院の博士課程は女性が28%、約3割近くいるのですが、教授になりますと8.8%という割合になってしまいます。
組合の女性割合は約27%でありますが、役員の割合は約7%になっています。国家公務員については、平均しますと女性の割合は20%以上ですが、管理職、これは本省の課長相当職以上ということですが、1.4%ということになっています。米、英、仏等と比べてみましても非常に少ない状況だということがわかります。さらに国家公務員の女性割合は20%以上とありますが、実は海上保安官ですとか、警察官になりますと、これがぐっと下がって女性職員そのものが5.5%しかいないという状況になっています。
ここには書いておりませんが、研究職に占めます女性の割合は14.7%です。先ほど大学院博士課程における女性が約28%いるとお話いたしましたが、それから見ましても研究者における女性割合14.7%というのは非常に低いと思います。
また、建築技術者に占めます女性の割合は4.7%というようになっておりまして、まだまだ横へのチャレンジ、上へのチャレンジが必要であろうという結果になっています。
それでは、2ページに戻っていただいて、各分野でどのような支援策を行っていくかにつきまして概要をご説明したいと思います。
まず真ん中あたりですが、「雇用」「起業」「NPO」「農業」「研究」「各種団体」「地域」「行政」「国際」とさまざまな分野が並んでおりますけれども、それぞれ共通する支援策といたしまして、まず「ポジティブ・アクションの推進」がございます。
1990年、国連のナイロビ将来戦略の実施に関する第一回見直しと評価に伴う勧告及び結論において、1995 年までに、あらゆる社会における指導的地位に占める女性の割合で少なくとも30%程度にまで増やすという目標を掲げたわけですが、日本では夢のまた夢という状況です。
1995年の北京会議のとき、私も行きましたけれども、30%をもう少し上に伸ばそうかとか、もう一回30%にしようかとかといろいろな議論があったのですが、「30%にしましょうか」と言うと、「もう自分たちの国は30%なんてとっくに達成してしまったから今さらそんなのを目標にされても困る」という国があり、それから「とても30なんて無理」という国もありで、話がまとまらなかったのですね。それで北京会議のときは数値目標が出ませんでした。数値目標があるというと、1990年のナイロビ将来戦略勧告で示された30%というのがとりあえずある数字です。ようやく日本も、これを具体的に2020年までに達成しようという気運が出てきたわけであります。25年遅れではありますが。
今申しましたことを一般化いたしますと、「いついつまでに何%ぐらいを目標にして進んでいきましょう」というのが一つの方法なのですね。これはポジティブ・アクションの典型的な例でございまして、ゴール・アンド・タイムテーブル方式と呼んでおります。掛け声だけではなくて、今ご報告がありましたようにアンケートを取ったり、ヒアリングをしたりして、達成具合をきちんきちんと評価しながら進むことによって、その達成を図ることが重要になるわけです。その他、いろいろな形でポジティブ・アクションを実施していきましょうということになってきます。
もうすでに我が国は、ポジティブ・アクションが具体的にさまざまな形で行われております。3,4ページ(P.30)の「わが国における主なポジティブ・アクション」を見ていただくと、これだけ各分野で進んでいます。
まず「雇用」の分野ですが、これは男女雇用機会均等法に基づくポジティブ・アクションです。男女雇用機会均等法というのは、女性の地位向上のためにできている法律ですので、女性がターゲットになります。女性の職域拡大、教育訓練の実施、意欲と能力のある女性の積極的登用、育児・介護休業制度、柔軟な勤務形態、それから企業内保育施設設置などの仕事と子育て両立支援ということに自主的に取り組んでいる企業があります。
それから行政も、厚生労働省の局長が入って「女性の活躍推進協議会」を開催して、進められています。「再就職モデル開発事業」なども行っているところです。
それから公契約、補助金交付における取り組みというのは、非常におもしろい取り組みで、先進的な例としては、千代田区の例があります。7ページ(P.31)を見ていただきますと、「すでに始まっています!チャレンジ支援」の地方公共団体における事例があります。
これは平成15年度から建設工事等競争入札参加資格の審査の際に、主観的事項としてISO認証取得、それから男女共同参画社会の実現への貢献等に関する状況を提出することとなっております。この男女共同参画社会の実現への貢献の報告事項としては「育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に規定する育児・介護制度の基準を上回る制度を独自に制度化している場合に報告書を提出しますと、そういう点を総合数値として加算されています。間接的ながら、男女共同参画社会へ貢献する企業へと促しているという役割です。
3ページに戻っていただきまして、「起業」につきましては、経済産業省、あるいは地方公共団体における「女性・高齢者低利融資制度」があります。
「農業」はとばしまして、「研究」ですが、日本学術会議では女性会員比率を10%まで高める目標値を定めて、すでに推進しているところですし、国大協のお話も今、先ほどご説明があったところです。
名古屋大学でも非常に先進的な取り組みをしておられまして、これが全国の大学のモデルとなって、他の大学もなさってくだされば、国大協の目標はきっと達成できるだろうと思います。非常に先進的で詳細な方策を決めていらして、今お話を伺いますと、その推進状況につきましてもとてもすばらしい取り組みをしていらっしゃいます。まさに今日のフォーラムを、名古屋から日本に発信できるのはこういう前提があったからだなと思って伺っていたところです。
「各種団体」の方では、日本労働連合総連合会で「第2次男女平等参画推進計画」として、2001年から2006 年までの達成の期間で、女性組合員割合27%に応じた女性執行委員数とするなどのゴール・アンド・タイムテーブル方式を採択しています。
「行政」では、国の審議会委員等について、2005年度末までのできるだけ早い時期に30%を達成すること。それから国家公務員には2005年度末まで、各省庁における目標を設定した計画を策定するということで、内閣府も、9月には職種に関わりなくどの職種も30%以上女性を採用するとか、女性の登用に努めるとか、男性が育児休業を取りたければ希望に沿うということを盛り込んだ目標を作ったところでございます。このように、各方面でいろいろなポジティブ・アクションが進んでいる状況です。
次に、パンフレットの5ページ(P.31)に、「身近なチャレンジ支援」として、「いつでも、どこでも、誰でもチャレンジできる」チャレンジネットワークを形成しましょうと、モデルをわかりやすく提供しましょうとあります。これは、女性が意欲と能力に応じてさまざまな活動に参加していくことを可能とするため、女性のチャレンジ支援関連情報のネットワーク化、それからワンストップ化を実現し、再就職、起業、NPO
活動、農林水産業、研究、まちづくりなどにチャレンジしたいと考える女性が、いつでも、どこでも、だれでも、ほしい情報を関係機関の垣根を越えて容易に入手できる効率的な情報提供システム、これを「チャレンジ・ネットワーク」といっておりますが、それを構築するように提言しております。
具体的には、パンフレットの5ページ、6ページ、見開きを見ていただきたいと思います。ネットワークの支援機関といたしましては、ここにございます地域における企業、行政、大学、各種団体、NPOセンター、ボランティアセンター、ファミリー・サポートセンター等両立支援を行う支援関係機関が挙げられております。
たとえば、支援策の方向としましては一人ひとりのニーズに合ったチャレンジをサポートしますということで、チャレンジモデルをわかりやすく提示をしています。このあたりがまさに地域におけるチャレンジネットワーク支援なのですが、地域におけるチャレンジネットワーク支援につきまして、さまざまな分野への身近なチャレンジが地域住民の日常生活そのものの中に確実に根付いていくためには、地域における行政、教育機関、社会福祉機関、それから企業、NPO等さまざまな機関や関係者が連携、協力のうえで一体となって取り組みを進めていくことが大事であるということが、参画会議の提言の趣旨です。このために企業、大学、行政、各種団体、NPO等による地域連絡協議会を設置して、それぞれの活動状況や好事例等の情報の共有、それとその提供を行うなどの男女共同参画を推進するための連携、協力の体制整備が効果的でかつ必要であります。
具体的な地域連絡協議会の取り組みとして考えられますのは、ポジティブ・アクションの好事例等の情報の共有、および提供だけではなく、さまざまな分野におけるポジティブ・アクション推進のための広報啓発のためのセミナーなどの共同開催、研究プログラムの開発、共同研究などがございます。
ポジティブ・アクションの方式として、先ほどご説明したものは数値を決めてそれに向かってアンケートをとったり、ヒアリングをしたりして進める方法なのですが、他にもさまざまなものがございます。
たとえば、企業にお話を伺うと「登用したいのだけれど、女性がいないんだよね」というお話をされることがあります。しかし、お話をよく聞いてみますと、女性の正社員はいいるんだとおっしゃるのですね。「いるのだけれども、幹部に登用するためにはそれなりの知識や能力が必要とされるので、そういう人がいないんだよ」とおっしゃいます。「じゃあ男性はどうやって選ぶのですか」と聞くと、何々の研修を受けたことがある人と決まっているらしいのですが、その研修に女性がいないと言われます。その研修にはどうして女性がいないのかというと、その研修を受けるには前の段階があって、そこにまで女性がまだ来ないんだということなんです。なぜその前の段階に女性が来ないかというと、「実はどうも問題は最初にあるんだよね。最初のときに何かチャンスなり、研修なりがあったときに、ちゃんと男女平等で女性にも声をかけるんだよ。」と言われるのですね。「だけど女の人が断るんだ。それで女の人に声をかけても全然寄っても来ないからしょうがないから男ばかりになっちゃうんだよね」と話をされるので、「なんで女性は来ないのですか」と伺うと「それはたとえば子どもを産むとか、子育ての真っ最中とかで手が放せないって断られちゃうんだよ」とおっしゃるわけです。
さて、そこでそのときに、子育て真っ最中の女性が、「泊まり込み研修を何日間かしなさい」と言われてもなかなか「はい、行きます」と言えない場合が多いのですよね。一回「行けないです」と言ったばかりに、一生幹部候補生のルートを断たれてしまうということが問題なわけです。「たとえば、そのあとにもう一回声をかけて、研修に参加してもらったらどうですか」と言うと「かけたいのはやまやまだけど、年齢制限というものがあってね。その研修は30までになっているんだよ」と言われます。そうなると、30歳を過ぎてから「私はようやく子育てができて手が離れたから、研修があったら行ってもいいです」と言っても「あなた今頃やってもね」と言われてしまうのですね。
そこが一つ考えどころでありまして、子育て中などのときに研修制度の年齢制限をはずすだけでも、結構女性は次のステップに移れるわけです。逆にそういう制度を作ることによって、男性の中にも親の介護とか、場合によっては育児とかで、そういう研修には参加できない人もいるわけでして、男性にもやさしい制度になるわけです。
ですから、ポジティブ・アクションというのは、ゴール・アンド・タイムテーブル方式もそうですけれども、いろいろなやり方があって、たとえば研修の年齢制限をはずす、それだけでもポジティブ・アクションになり得るのです。「女性がどうもいない。うちの女性たちはだめだ」と言う前に、どうしていないのかということをもう少し掘り下げて考えていただいて、本当にあたたかい心とやわらかい心で、一体何がネックになっているのかということを、その人たちの身になって考えていただくことによって新しいポジティブ・アクションがどんどん生まれてくると思います。それを入れることによって、男性にとってもやさしい制度ができてくるのではないかという気がしているわけなのですね。ですから、ポジティブ・アクション、今は目標値を掲げて進むということが先行しておりますけれども、さまざまなポジティブ・アクションを開発して、それを共有していただくと、たいへんありがたいことだと思います。
それからまたパンフレットの5ページ、6ページでございますが、各支援機関で支援情報、たとえばIT講習、キャリアアップセミナー、子育て支援など、共有する各地域の社会資源については、それぞれのところでいろいろお考えだと思いますが、そういう情報の共有とか、あるいは組織単独に対応するのではなくて、地域における他の機関の提供する支援をお互いに活用し合うということも連携になると思うのです。
そしてこのような取り組みをするネットワークを構築しまして、継続的に、そして組織的に行うということによって、少ない資源を効率よく高めて身近なチャレンジをしたいと思っている人たちの力になることができるのだと思います。
5ページの左側にありますように、「現状」としては、何をしたらよいかよくわからないとか、自分に合うものがどうもわかりにくいとか、どこからスタートすればいいのかわからないとか、たくさん窓口があってどこに行けばいいかわからないというような、もやもやしている方が結構いらっしゃると思いますので、そういう方々にとって1つの窓口に行けば用がたりるようになればまことに使い勝手のいいサービスができるのではないかと思います。
本日は、企業、団体、行政の関係者も一堂に集まられて、そして男女共同参画における取り組みを産学官連携という切り口から考える試みとして、このシンポジウムを契機として、こういう方々のネットワークをお作りになっていただけるのではないかと期待しております。そして取り組みが進みましたら私たちにぜひ教えてください。あちこちで宣伝をさせていただきます。
今後の国の取り組みですがポジティブ・アクションは、これは実は先ほど松尾総長が言ってくださいました男女共同参画社会基本法の中に「積極的改善措置」と定義をされております。これは、国の法律におきまして初めての定義でして、実は男女共同参画社会基本法はどこにも「男性」「女性」というどちらかを出すということはないのですね。したがいまして、積極的改善措置、ポジティブ・アクションも基本法上は男性も対象になりうる余地はあるのです。ただ、今の世の中は、やはり圧倒的に女性の進出が遅れておりますので、やはり女性向けのポジティブ・アクションというのが多いということになります。
この基本法は日本国憲法に基づいてできておりますので、決してこれが逆差別ではない、真の平等を図るための措置であるということで、憲法の14条には反しないという法制局のお墨つきも出ているところでございます。さらに法制面を中心にもう少しどこまでできるのかといったような話が必要かということで、現在「ポジティブ・アクション研究会」というのを内閣府の男女共同参画局の中に作りまして検討を進めておりまして、平成16年度中に取りまとめを予定しております。
来年度におきましては、地域レベルの「チャレンジ・ネットワーク」の構築をすすめるために、モデル的に「チャレンジ支援地域推進連絡協議会」を開催して、地域におけるネットワーク構築のための調査、研究を行う予定で進んでいます。
「チャレンジ・ネットワーク」については、今年度開催されます「チャレンジ支援ネットワーク検討会」において、そのあり方について検討を進めているところでして、現在、サンプルサイトといたしまして国レベルでの支援情報を集めました。
チャレンジ・サイトを男女共同参画局にて試行中です。そのアドレスがこのパンフレット裏表紙の一番の下にございます(http://www.gender.go.jp/e-challenge/)。まだ施行運転でございますが、今後改良を加えまして、支援情報の充実とともに好事例なども紹介する予定ですので、サイト上でアンケートを実施しております。ぜひご覧いただきまして、いろいろなご意見をいただきたいと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
最後になりますけれども、最近、OECDの調査が出まして、それによりますと日本はOECD調査の国々の中で4年制大学卒業者に占める女子学生の割合が39%と一番少なくなっています。日本が最低で、次が韓国、次がトルコとなっていまして、平均は55%です。大学院修士レベルの卒業生でも女性の方が男性よりも多いという国も結構あり平均は51%です。日本はここでも最低25%に過ぎません。さらに、専攻分野の問題もございまして、これもOECDの調査なのですが、たとえば社会科学分野ですとか、自然科学工学分野に進む女性比率というのは、日本は非常に少なく最低です。これを、日本、韓国、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの調査で見ますと、ある時点まで韓国と日本は割と似たり寄ったりだったのですが、1996年から98年の間に急速に韓国が上に行ってしまった。韓国は、イギリスとかフランスとかドイツとかアメリカと並んで、特に工学分野において先進国型になっております。日本は、2001年現在で工学分野は10%と韓国の半分以下です。
専攻分野が女性と男性が違うということは各国共通ではありますが、先進諸国はその差が縮まっている状況下、日本のみ、いつまでも抜け出せないというのは、一つ大きな問題なのではないでしょうか。
もし今のままですと、日本は国際的人材擁立に負けてしまうのではないかと思って非常に心配しております。そういう意味で、この「女性のチャレンジ支援策」というのはとても大事なことだと思いますし、このように産学官が連携されて取り組みを進めていただくことは本当に期待しておりますので、ぜひ名古屋から発信していただきたいと思っております。どうもありがとうございました。
資料−女性のチャレンジ支援策(PDF) |
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